予防介助専門士プロジェクト

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予防介助認定協会

予防介助に関する全国のセミナーを開催しています。


予防介助とは?


現在世界中でいろんな介助法がありますが、実は目的別に分けると2つに分けることができます。それは「安静介助」と「予防介助」です。

 

安静介助とは、その名のとおり「いかに安静に人を運ぶか」を目指した介助法です。介助する人をいかに負担なくA地点からB地点まで運ぶかという技術です。例としてはリフトやスライディングシートを使用する介助があげられます。これらの道具を使うことで介護者の負担を減らすことで腰痛を予防します。介助される人は動かないことを基本的に要求されます。もしくは本来の人間との動きとは違う不自然な動きで支援をします。目的別にわけていますので、機械や道具を使用しない人的介助でも「相手をいかに負担なく運ぶか」という視点であれば安静介助と言えます。人をコンパクトに丸めて運ぶ方法を推奨するボディメカニクスのような技術も安静介助の一つと言えます。

 

予防介助の目的は介助を通して「いかに重症や廃用を予防するか」という視点にたった介助方法です。安静介助が基本的に介助される側に動かないことを求められることに対し、予防介助では積極的にゴソゴソすることを促しながら介助します。人間の本来もっている自然な動きを引き出すことを目的にします。介助者の日々の関わりを通じて介助される人が元気になっていくことを目的にしています。

 

 

介助に関する現状の課題


最初に強調しておきたいののは「安静介助」も「予防介助」もそれぞれ必要な介助です。問題は安静介助と予防介助のデメリットとメリットが明確でないために、その相手にあった適切な関わりができていない。ということです。

 

例えば全身がやけどしている人に対してゴソゴソしてもらう予防介助なんて負担が強すぎでやらないほうがいいです。その時はリフトなどで安静に運ぶほうが相手の負担も小さくなります。しかしやけども治ってきたのに安静介助を続けているとどうなるでしょうか。当然今後は廃用がすすみそのまま寝たきりの人生を送ることになるでしょう。やけどが軽減してきたら無理なくゴソゴソを促す予防介助を選択する必要があるのです。

 

おなじように寝たきりの介助をするのに、介助者の腰に負担がないからといって毎日「安静介助」をしていると介助者の腰は守れるかもしれませんが、寝たきりの人の廃用はさらに促進されることになるでしょう。もちろん乱暴な介助よりも安静介助のほうが負担は少ないかもしれません。しかし安静介助を続けていても二次障害や拘縮は少しずつ確実にすすんでいくのです。もちろん介助技術がない場合や、老老介護などで介助者の身体が脆かったり上手に関われない場合は乱暴な介助よりも、安静介助を選ぶほうが現実的にベターといえます。

 

安静介助では負担のリスクは軽減しますが廃用を予防できるものではありまえん。本来それが可能なのはゴソゴソする介助技術を学び実践することです。私たちは「予防介助」を学ぶことで安静に介助するよりも寝たきりを予防や重症化を予防することができるのです。寝たきりの人を本当の意味で救えるのは予防介助の技術であると言っても過言ではないでしょう。

 

 

予防介助専門士の育成


予防介助が重症化や寝たきりを予防することを目的にしていますが、困ったことに予防介助として確立した手法はまだこの世の中に存在していません。安静介助の技術は多いのですが、予防介助に関する確立したスキルを教えてくれるところがないのです。もちろんキネステティクのように人の楽な動きを支援するスキルは役に立つものではありますが、現実的には動けない人をどのように「学習してもらい」動きを促進するか。という「人がどのように学ぶのか」に詳しくないと予防介助を確立することはできません。現実にはマスに重さを流せない人もたくさんいます。その時にただ何度もマスから重さを流すことを繰り返すのではなく、もっと多くの選択肢をもっておく必要があります。(例えば腰の学習を手伝うことで頭の重さが流れるようしたり、座って動く介助で立ち上がりにつながったり、肩代わりの概念でポジショニングを実践し動きやすくしたり。より多様な選択肢が必要です)

※マスは頭は胸郭などの身体の大きな塊のことです。

 

ここまでの流れでお気づきのとおり、それを教えているのがシンプルラーニングです。シンプルラーニングでは動きの学び方を理解します。動きの多様なつながりを理解し、さまざまな視点で介助を通して動きの学習を手伝うことができるようになります。そのため予防介助はシンプルラーニングをベースにして確立することが必要です。

(予防介助はシンプルラーニングを受けていなくても受講できます)

 

多くの介助は「目の前の人にどう動いてもらうか」という場面的な視点で終始しがちです。A地点からB地点にどう運べばいいか。だけなんです。予防介助は日々行う自分の介助を通して少しずつ動けるようになることを学ぶ介助です。「プロセス」の中で介助を考え日々実践し、楽に動けることをサポートします。例えば寝たきりの人の体が固くて介助が大変なこともあるでしょう。その場面で動かすかばかりに主眼をおくのではなく、その人の日々のポジショニングをして楽に寝てもらったり、日頃からゴソゴソするような介助を促したり、その関わりを日々丁寧に積み上げていくことで緊張が少しずつ緩み本人も楽になり、他の介助もやりやすくなる。一場面的に介助を考えるのではなく「つながりの中での介助」を行うことで人は少しずつ回復し元気になります。

 

今している介助が将来的によくも悪くも本人が影響を与えます。だからこそ少しでも良い影響を積みかさねることを実践する。そのような予防介助を通して本人が少しでも楽に動けるようになることで介助負担が減る。そうなることが利用者・介助ともにwin-winの介助だと言えます。それが予防介助専門士の目指す介助です。

 

予防介助専門士の内容と価値


コースは4日間を基本に行います。

(前期2日・後期2日)

 

内容を簡単に説明すると、寝たきりにならないための、もしくは「寝たきりから少しずつ回復するため」の関わり方を総合的に学びます。寝たきりにならないための介助法はもちろんのこと、それだけでなくポジショニングに技術や福祉用具の適切な考え方から、人が動きを学ぶ仕組みや色んな人に対応できる応用力を高めます。ポジショニングひとつとっても世界でもまだ体位を無理やり矯正しようとすることが最先端とされています。はっきり言って矯正的にクッションを使えば変形はより悪化していきます。世界的にみても予防介助という関わりは最先端のアプローチだといえるでしょう。そしてこれからのスタンダードになる可能性を秘めています。実際多くの人が予防介助のポジショニングで安楽になり喜ばれています。声に出せない人でも明らかに緊張が落ちリラックしし呼吸と表情が穏やかになります。

 

予防介助専門士になれると、ただ安静に運ぶ介助だけでなく、予防介助という選択肢をもつことができます。そうすることで目の前の人にとってどちらの介助が適切か「介助者自身が選ぶ」ことができます。安静介助しから知らないと相手がどんな状態であってもそれを続けるしかありませんが、予防介助を知ることではじめて人は盲目的に信じることをやめて目の前の人と向き合うことができます。

 

 

また「予防介助専門士」とあえて認定制度にすることにより認定を受けた人の社会的地位が上がるように考えています。これはまだ将来的なことかと思いますが、施設に予防介助専門士が5名いる。と言われたら「うちのおばあちゃんを寝たきりにならないような関わりをしてくれんだなぁ」と多くの人が想像できるようなものになれば資格をとる価値も今後発生すると思います。施設ではない訪問看護同士やヘルパーが予防介助専門士をもっていると、いかにゴソゴソを促せばよいかの連携がスムーズになります。今後施設を選ぶ基準や他の職種と連携する基準になれるのです。これからの施設やサービスを選ばれる価値の一つとして「予防介助専門士がいる」となることを目的に活動していきます。

 

さいごに


長くなりましたが、現実的に動けないのにポジショニングをまともにせずエアマットだよりにして廃用を促進したり、スライディングシートが正しい信じ込んで拘縮を促進させたり、人間を投げ技のように動かしていることが介助だと思われたりしているのが現状です。もちろんそれらは乱暴な介助よりはマシかもしれません。体調が悪いときや技術不足で介助ができない人には必要なこともあります。その場合は安静介助のほうがいい時があることも現実にはあると思います。私も老々介護ではリフトの使用をすすめることもあります。道具に頼よることで年老いた夫婦だけでも在宅生活が送れることを優先することも必要なこともあります。

 

しかし私たちは安静介助で起こるリスクについてあまりも無関心であると言わざるおえません。実際に介助者の腰は安静介助で守ることができるかもしれません。しかし「動く機会を奪われること」や「不自然な動きを強要されること」の積み重ねにより将来的に苦しい思いする現実は確実に存在します。また使われた人が自ら「苦しい」「辛い」と自ら訴える能力がない人がほとんどです。それなのに国家資格をもつプロがスライディングシートやリフトで二次障害や拘縮が予防できるという誤解を広げているのが現状です。私は本気でリフトやスライディングシートも時に必要なものであると思っています。しかしこれらのデメリットを伏せてデマを教えられた状態で介助する人がまともに判断できるわけがないと思います。デメリットを知った上で使うからこそ、そのデメリットを補う関わりができたり、本当にその人の状況にとって良いものが選べると思うからです。情報を捻じ曲げて多くの人の判断を誤解させることこそ一番良くないと思います。

 

 

私は予防介助という概念を広げることで、介助者は今自分の援助は何のためにしているのか?そんな振り返りが自分自身でできると素晴らしなと思います。自分で自分のやっていることに向き合うためには対比するための新しい概念(安静介助と予防介助)が必要がです。思考も比べることではっきりするものです。そして比べるこで、介助者自身の頭も整理され自分で本当に適切なものを選択できるようになります。

 

介助で言われたことをそのまま守って行うには工場で作業するとのよく似ています。工場がよいとか悪いと言っているわけでなく、せっかく人とかかるのに楽しくありません。自分で考えて目の前の人の緊張を感じ創意工夫するから楽しいのです。予防介助を学ぶことは介助される人だけなく、介助する人の主体性の回復にもつながります。仕事が楽しくなる。毎日のケアが楽しくなる。介助者の可能性も広がる。そして重症化も予防できる。そんな介助を日本に広げるためにご協力ください。